STORY 2 「子犬が生まれたら…」

※スペーサー

三沢市在住

子犬が生まれたら目が開かないうちに、山に捨てて来よう。」

これは私が子供の頃に聞いた、近所の大人たちの会話です。
昔は山に捨てる事が、一般的に行われていたのかも知れません。
当時の私はショックで、しばらくはこの会話が頭から離れませんでした。

ペット事情も時代と共に変化し、猫ブームも今では家族の一員として迎えられる様になりました。
それでもまだ、人間の身勝手な事情から多くの犬や猫が捨てられています。
多頭飼飼育崩壊や、一部のブリーダーによる無理なお産を強いられていた繁殖犬、ペットショップの売れ残りの犬や猫、飼い主に虐待された犬猫の廃棄等々。 残酷非道なニュースを目にするたびに、心がえぐられる様な思いをしています。

私は幼い頃から動物の居る家庭で育ち、私の人生に特に猫が大きく関わっています。その中で寿命や事故、病気等で亡くした猫がいました。一番辛かったのが、ジステンパーに罹った猫です。震えの止まらない猫を暖め手を尽くしましたが、最後は喉の麻痺で水も飲めなくなり亡くなりました。生後4ヶ月の可愛らしい子猫でした。
いくつかの命に向き合う度に、とても辛くペットロスにもなりました。
現在は、里親募集で迎え入れた三匹の成猫と暮らしています。私は年齢的にも、愛情を注いであげられるのは今居る三匹までが限界と思っています。これ以上飼う事は出来ませんが、これまで時々 捨て猫や野良猫を保護·ケアをし里親さんに引き渡しをしていました。
※スペーサー

そんな時動物愛護センターで育成ボランティアを募集している事を知り、少しでもお手伝いが出来たらと思い講習会を受けに行きました。

センターでは 子猫に必要なケージ 食事 トイレ砂等を貸して下さるので、子猫を連れて帰り人や猫に慣れるための育成をしていきます。

最初は子猫が新しい環境に慣れてくれるのか心配でしたが、帰宅後ランチを用意すると夢中で食べてくれたので一安心しました。400グラム前後の子猫のケアをしながら、体重測定をし毎日記録していきます。センターで規則正しい生活をしているので、家でも夜そんなに鳴く事も無くすんなり寝てくれます。 先住猫たちとは部屋を別にしているのですが、お互いに気になって仕方がない様子でした。

三日ほどして先住猫と対面をさせて、少しづつ触れ合わせていきます。初めは三匹がそれぞれの位置で、走り回る子猫を目で追っているだけでしたが、少しづつ仲良く遊ぶ様になりました。子猫も前日まで出来なかった階段を下り翌日には上れるようになり、日々成長していく姿にいつも驚きと感動を覚えパワーをもらっています。

一週間もすれば、小さな体で一階二階の全室を制覇してしまいます。個性豊かで可愛い子猫ばかりで、見ていて自然に笑顔になります。また、先住猫の子猫への接し方も見る事が出来るので嬉しいです。 一番下の猫は、上で鳴いてる子猫をまるで母親の様に咥えて下りて来ます。その様子が微笑ましいやら可笑しいやらで、オス猫なのに笑ってしまいます。 そして犬の様に大きい真ん中の猫は、何度も両手を上げて大ジャンプして来るチャレンジャー子猫に対し、いつも好きなようにさせてあげています。 それを一番上の猫が、高い所から監視しています。

朝は私が起きると起き、 「○○ちゃんおはよう」と声をかけるとにゃあにゃあと返事をし、まず爪とぎで爪を研ぎます。パウチのフードを入れると勢い良く食べるので、その姿に一生懸命生きようとしてるんだなと感じます。暖かい日はベランダで日光浴をしたり、先住猫と遊んだり、お昼寝の時はモーツァルトを聞きながら寝ます。夜も食事の後はたくさん遊ぶので、ブランケットをくわえふみふみしながらゴロゴロと喉を鳴らしてぐっすり寝てくれます。

※スペーサー

目標体重になるとセンターにお返しするのですが、約一ヶ月の間一緒に過ごすとやはり情が移ります。

割り切ってはいても、帰りの車の中でボロボロ泣いてしまいます。 特にお返しする際、子猫が何かを察したようにぶるぶる震えていると後ろ髪が引かれる思いがします。 捨てられたと思っていないかと考えると辛くなりますが、一日でも早く新しい飼い主さんの元で幸せになるようにと願ってお別れします。

譲渡が決った事を知ると、家族で大喜びです。ホッとして次の子猫をお迎えする心の準備が出来ます。一番可愛らしい時期にケアが出来てとても嬉しいです。今迄、物の様に捨てられていた命を一つでも救いたくこれからも育成ボランティアを続けて行きたいと思っています。

猫はストレスの多い生き物なので、食事やトイレのケアは勿論ですが遊んであげたり誉めたり声をかけてあげて欲しいです。体調はどうなのか気にして見ていく事で早く異変に気付いてあげられます。 そして完全室内飼を目的とし、去勢や不妊手術をする事により、病気から守り繁殖を防ぎます。 どんなに小さくても、習性からトイレや自分の事は自分で出来ます。 お散歩も特に必要が無く、猫は窓から景色を見たり風を感じるのが好きです。 環境さえ整えてあげると、毎月に掛かる費用も少なく とても飼いやすい生き物と言えます。  縁あって家族の一員になったので、最期看取るまで猫生を楽しく生きられるよう サポートしながら一緒に暮らして行きたいものです。

青森県動物愛護センター